1978年愛知県出身。調理師学校卒業後、銀座「勘八」で5年、六本木「六本木 寿し屋のいけ勘」で7年、恵比寿「鮨 竹半 若槻」で4年、16年間の修行を積み、2015年10月、36歳の時に独立し、「西麻布 鮨いち」をオープン。2024年3月29日リニューアルオープン。
小さいころからの夢であった鮨職人の道へ入ったのは1996年。今までの修行を通し、私の中に深く印象を残していること、それは、親方の存在です。修業時代に最も驚いたのは、お客様はお店に来るのではなく親方に会いにきていました。いつか自分もお客様に会いに来てもらえるようになりたい。と決意しました。
3つ目の修業先「鮨 竹半 若槻」での修行で、独立するきっかけとなる事がありました。経験を積み、お客様のお相手も任されるようになったことで、自分の力を過信してしまい、ある日、親方に「自分で店を出せるならやってみろ。」と言われ、悔しさのあまり「2年後に独立します」と宣言したものの、独立の勉強を全くしていなかった自分が何一つできない無力さに気付いたのです。
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ただお鮨をご提供するだけではなく、お客様の記憶に残る演出を大切にしています。お客様との交流を通し、お好みはもちろん、その日の気分や、召し上がりたい量などを見極め、適したお鮨を出すように心がけています。ご来店の際に交わすご挨拶から、お見送りの瞬間まで、共に過ごすひと時は私にとって特別なものです。香り、盛り付けの美しさをお愉しみいただき、口に運んだ際に想像をした味わい以上の美味しさを感じていただけるように、努力してまいります。
私は休日によく、地方へ赴きます。行く先々で、その土地に根差した伝統的な食文化に触れ、新しい発見を得ることが多々あります。地方の特色が色濃く反映した調理法や食材の組み合わせ方など、奥深く自然の理にかなっていることが脈々と受け継がれていることに感動を覚えます。鮨はもちろん、箸休めなどの料理に取り入れられるよう、鮨の進化を常に考え趣向を凝らしております。まだまだ学ぶことは多く、探求心は尽きません。吸収した学びを「鮨いち」の料理に反映させ、お客様に喜んでいただけるよう、これからも精進してまいります。
つけ場に立ち、鮨を握ること。私が日々心を尽くす先には、この仕事を後進に伝えていくという思いが含まれています。自分自身の体験を踏まえて、鮨職人として独立を目指す皆さんの力になれればと思っています。鮨職人として多くの学びを先達から教えていただき得難い経験をすることができました。それは握りの技術のみならず、精神、そして日本の食文化です。
「その恩をこれから返していきたい」。鮨を通し繋げていくものは、技術と食文化だけではなく、人と人との心の在り方です。そこにおいても、一つのストーリーを紡いでいきたいと思っております。